チアダンス・各種ダンスのケア|ほか審美系スポーツ

チアダンス・その他ダンス

「ひねった覚えも、ぶつけた覚えもない。なのに、気づいたらずっと痛い」――チアダンスや競技ダンスの現場で、いちばんよく聞く相談がこれです。はっきりした怪我の瞬間がないぶん、「言うほどのことでもないか」と我慢したまま、大会や発表会の直前になって困ってしまう。そんな経験はありませんか。

Cheer-Ath-Up代表のサンチェスです。柔道整復師として整形外科に勤務しながら、チアリーディング・チアダンスのチームに帯同してトレーナー活動を行っています。これまでJCA(日本チアリーディング協会)ルールのチームを3チーム、USA(ユナイテッドスピリッツアソシエーション)ルールのチームを2チーム担当してきました。

このページで扱うダンス

ここではチアダンスと競技ダンスを主軸に、ブレイキン、ジャズダンス、ヒップホップなど各種ダンスのケアもまとめて扱います。

ジャンルが違えば、見た目も文化もまったく違います。それでも、体に起きていることには共通点があります。決められた振り付けを、大会や発表会に向けて何度も繰り返す。この「繰り返し」が体に何をするか、という点はジャンルを問わず同じです。まずはその共通の土台から整理し、後半でジャンルごとの違いに触れます。

「1回の衝撃」ではなく「回数」が効いてくる

ダンス系競技の痛みの多くは、使いすぎ(オーバーユース)によるものです。一つひとつの動きは、決して無茶なものではありません。問題は、同じ振り付けを何十回、何百回と繰り返すという点にあります。

コップに水を一滴ずつ落としていくところを想像してみてください。一滴では何も起こりませんが、落とし続ければいつか溢れます。使いすぎによる痛みは、この「溢れた瞬間」に表に出てきます。だから本人には、痛くなったきっかけの記憶がありません。

これが厄介なのは、相談が遅れる理由にそのままなってしまうことです。「怪我をしていないのに病院に行くのは大げさかもしれない」と考えて、溢れきってから相談に来る。振り返ってみると、その何週間も前から小さなサインは出ていた、というケースがほとんどです。

股関節は、痛みの「隠れ場所」になりやすい

脚を高く上げる動作が多い競技では、股関節の使いすぎによる不調が起こりやすくなります。ここで知っておいていただきたいのが、股関節の問題が、股関節そのものではなく、膝や腰の痛みとして表に出てくることがあるという点です。

股関節はもともと大きな可動域を持っているぶん、少しくらい動きが悪くなっても、周りの関節が肩代わりしてごまかせてしまいます。ごまかしがきいてしまうからこそ、本人も専門家も本体の状態を見落としやすい。「膝が痛い」「腰が痛い」という訴えの裏で、実際に働きすぎていたのは股関節だった、ということが少なくありません。

だからこそ、痛む場所だけを見て終わらせず、股関節の動きを一度確認しておくことをおすすめします。

踏み切る足と、着地する足は別物

ジャンプで大きく踏み込むための足と、着地の衝撃を受け止めるための足とでは、かかる負担の種類が違います。そのため、痛みの出方によって起きている問題も変わってきます。

着地の衝撃は、足部から膝、股関節へと順番に受け渡して吸収されていきます。この受け渡しのどこかが詰まると、そのぶんの力が一か所に集中します。着地のたびに膝がズキッとする場合、膝そのものが弱いというより、衝撃を分け合う仕組みがうまく働いていない可能性があります。

対策として意識したいのは、次の3つです。体幹のトレーニング(着地の衝撃を全身に分散して受け止めるための土台)、跳んで着地する動きを繰り返すトレーニング(次の動き出しに備える瞬発的な力を養う)、そして関節を動かさずに一定の力を入れ続けるトレーニング(腱に適度な刺激を入れる)。柔軟性を上げることだけが答えではない、という点が大切です。

つま先を伸ばす動きは、実は合わせ技

「ストレッチはしているのに、つま先が綺麗に伸びない」という悩みも、ダンス系競技に共通してよく見られます。足首まわりの不調は、ダンス、チアリーディング、器械体操のように跳ねる動きの多い競技で広く起こるものです。

つま先を伸ばす動きは、単に足首を伸ばしているだけではありません。足首、足指、踵、土踏まずといった複数の動きが組み合わさって、あの一直線のラインができています。どれか一つがうまく働いていないと、いくら伸ばす方向のストレッチを足しても形になりません。

簡単な確認方法として、足を伸ばした状態ですねの前面からつま先に沿って細い棒を乗せてみる「ペンシルテスト」や、床に置いたタオルを足の指でたぐり寄せる動作があります。どこで一直線が崩れるか、指が思うように使えているかを見るだけでも、ケアすべき場所の見当がつきます。

ジャンルによって、痛むところは変わる

共通の土台を押さえた上で、ジャンルごとの傾向も知っておくと、対策の優先順位が決めやすくなります。

チアダンス・競技ダンス:ジャンプ、ターン、脚を高く上げる動作が繰り返し出てくるため、負担は股関節・膝・足首に集まりやすくなります。加えて、チームで動きを揃える競技では、自分の調子ではなく全体の完成度に合わせて回数を重ねることになるため、「今日は休んでおきたい」という判断がしづらいという事情もあります。

ブレイキン:手や前腕で全体重を支える場面が多く、負担のかかり方が下半身中心の他ジャンルとは大きく異なります。倒立をイメージしていただくと分かりやすいのですが、本来は体重を支えるようにできていない手首に、繰り返し体重が乗り続けます。チアリーディングでも同じ構造が起きていて、手首の小指側にある軟骨のクッション組織の損傷(TFCC損傷)や腱鞘炎が高い頻度で見られます。手首の痛みは「そのうち慣れる」ものではないので、早めの相談をおすすめします。

ジャズダンス:ターンと柔軟性が求められるぶん、股関節と体幹の安定性が土台になります。開脚や反りの柔らかさがあっても、それを支える力が足りていないと、可動域の端でかばう動きが出て、腰や股関節の前側に負担が向かいます。

ヒップホップ:リズムに合わせた細かい上下動と踏み込みが、練習時間ぶんそのまま積み重なります。一回の負荷は小さくても回数が非常に多いため、膝と足首の使いすぎが起こりやすいジャンルです。

「ダンス」と一括りにされてしまう難しさ

ひとくちにダンスと言っても、ここまで見てきたように、求められる動きも体にかかる負担もまったく違います。チアリーディングの中ですら、JCAルールは「とめ・はね・はらい」を全員で合わせる書道のようなスタイル、USAルールは筆記体のように滑らかに見せるスタイルと、必要な体の使い方が変わります。ルール系統が変わっただけでジャンプの仕方が変わり、苦労する選手もいます。

選手の側も、「細かい違いを説明したところでピンとこないだろう」と感じて、自分の競技の特殊性をあえて語らないことがあります。専門家の側も、どう聞けばいいか分からずに触れないまま終わる。お互いの遠慮が、必要な情報を止めてしまっているのです。

この距離を埋めるのに必要なのは、ダンスの深い知識ではありません。「どんなジャンルのダンスですか」「次の大会や発表会はいつですか」「痛いのは踏み切るときですか、着地のときですか」――この一言があるだけで、選手は自分の競技を理解しようとしてくれていると感じ、評価に必要な情報を自分から話してくれるようになります。一生懸命に踊る人が、医療の面でも十二分にケアを受けられる。その環境を作ることが、Cheer-Ath-Upの基本的な行動指針です。

より詳しく知りたい方へ

このテーマに関連する記事はこちらです。

今日からできること

痛みがあるなら、「どこが痛いか」ではなく「どの瞬間に痛いか」を一つだけ言葉にしてみてください。踏み切るときか、着地のときか、脚を上げきったところか、手をついたときか。この一言だけで、相談したときに返ってくる答えの精度が大きく変わります。

まだ痛みがない方は、練習後に足の指を1本ずつ手で広げて回すところから始めてみてください(手をつくジャンルの方は、同じことを手首と指で)。1〜2分で終わります。使いすぎによる痛みは、溢れる前に手を打てるかどうかで、その後がまったく変わります。

お悩みはお気軽にご相談ください

股関節や膝、足首、手首の不調から、大会・発表会に向けたコンディショニングのご相談まで、Instagramやオープンチャットからいつでもお気軽にお問い合わせください。

← ほか審美系スポーツのトップに戻る